エスプレッソ

エスプレッソマシンもしくは直火式のマキネッタという専用の器具を用いて、深煎りの微細に挽いたコーヒー豆をカップ型の金属フィルターに詰めて、9気圧の圧力と約90℃の湯温で20から25秒の抽出時間で約1オンス(30ml)のコーヒーを抽出したもの。普通のコーヒーカップの半分ほどの大きさのカップで供されるため、デミタス(demiは半分、tasseはカップの意)とも呼ばれる。コーヒー豆を7g使用したものをエスプレッソと言い、14g使用したものはドッピオ(doppio、ダブルの意味。double espresso)と呼ばれる。また、エスプレッソを15mlまで淹れたものはリストレット(ristretto、「濃縮された」の意味)と呼ばれ、ウィークコーヒーの元になる。
カフェインの含有量において、エスプレッソは豆の焙煎が強いのでカフェインは揮発し、抽出時間も短いことから、ドリップコーヒーに比べて少ないとされる。一方、エスプレッソの方がドリップコーヒーより多いとの意見もある。
飲料自動販売機において、容器に紙コップなどを用いて濃縮原液を薄めて飲料を提供する方式の一部装置にはエスプレッソマシンに似た機構が内蔵されており、その都度豆を挽いていることを宣伝文句にしている場合もあるが、エスプレッソほど濃厚に抽出されているわけではない。

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誕生

1806年、ナポレオンがイギリス製品をボイコットする大陸封鎖令を発したことから、フランス植民地で砂糖やコーヒー豆が極端に不足した。このことがきっかけでチコリコーヒー(チコリや穀物を焙煎した、カフェインを含まないコーヒー風味の飲み物)などの多くの代用品や、新しいコーヒー飲料は生まれることになる。
ゲーテもイタリア滞在の際には寄ったと言われるローマの「カフェ・グレコ」の3代目オーナー、サルヴィオーニは、苦肉の策としてそれまで出していたコーヒーの量を単純に3分の2にして、価格を下げることで当座をしのいだ。これは多くの客に受け入れられ、グレコは多くの姉妹店を出した。これがデミタスカップの起源である。
ドリップコーヒーに比べてサイフォン式のコーヒーが圧力によってより早く、濃厚なコーヒーが淹れられるように、さらに高圧力で高速にコーヒーを淹れる方法として、エスプレッソマシンはデミタスカップの誕生から1世紀後の1901年にルイジ・ベゼラによって開発された。この特許を買い取ったデジデリオ・パボーニが1906年のミラノ万国博覧会に<ベゼラ>という名前で出品したのがエスプレッソの起源であり、1杯ずつ注文に応じて淹れる手法がトルココーヒーで既に定着していたイタリアで広く受け入れられたのである。
現在多く用いられている電気式のマシンは、1961年にエルネスト・バレンテによって開発された。日本でエスプレッソドリンクが広く受け入れられるようになったのは、スターバックスをはじめとするシアトル系コーヒーショップがチェーン展開されたことが大きい。
エスプレッソの語源は「急速」との説と、「特別に、あなただけに」との説、「抽出する」という意味の動詞の過去分詞形から派生したとする説がある。誰が最初に名付けたのかははっきりしていない。ただ、当時の時代背景から蒸気機関車の図版を用いて宣伝活動を行っていたエスプレッソマシンメーカーもあったことから、「急速」のイメージは強く関わっていることがわかる。また、イタリア語の鉄道用語でエスプレッソは「急行」をさす。

原理

一般的に用いられているエスプレッソマシンには直火式のものと、電気式のものがある。電気式の方が高い圧力をかけることができるため、おいしく淹れられるといわれる。
直火に器具を掛けて抽出する方式の器具の名称では、「マキネッタ」(macchinetta)や大手メーカー製品の商品名である「モカ・エクスプレス」(Moka Express)、「直台式」、「直火式」、あるいは単にエスプレッソメーカー/エスプレッソマシンなどと呼ばれている。マキネッタは元々、ナポリ式コーヒー用の転倒式抽出器(ナポレターナ)も含め小型のコーヒー抽出器を指す語であったが、日本では2000年代頃からこの直火に掛ける簡便なエスプレッソ抽出器を指す語として使われている模様である。
電気式の自動エスプレッソマシンでは、まずエスプレッソ用に細かく挽かれた豆を、レバー形状のフィルターホルダー(脱着可能。スターバックス社ではラポートフィルターと呼称)先端に装着しておいた金属製のバスケットの中へタンパーで押し込める。これをタンピングという。均等に押し込めたらマシンにセットし、圧力でコーヒー液を抽出する。マシンによって仕上がりは異なるが、エスプレッソには黄金色の泡が浮かぶことがある。これはコーヒー豆の油分やタンパク質に由来するもので「クレマ」と呼ばれ、甘さの元であると言われる。この上に砂糖を浮かべ、飲み干すのである。
エスプレッソマシンには、抽出時間や圧力などを手動で調整するなど複雑な操作を必要とする物もあり、細かく要望に応じた味を引き出すことが出来る。この技能に精通し、また以下に述べるバリエーションドリンクを淹れるにあたって、コーヒーに浮かべるフォームミルクに模様を入れる(ラテアート)など、専門の技能を持った者をバリスタと呼ぶ。
逆に、より容易においしいエスプレッソを抽出するという方向でデザインされた、使い捨てカートリッジを用いるタイプのエスプレッソマシンも存在する。このタイプのエスプレッソマシンは日本においてはネスレ社のネスプレッソが最も普及しているが、本場欧州では複数の規格が存在し、互換性において問題が発生している。また、イタリアのイリー社が開発し特許を取得したEasy Serving Espresso(E.S.E.)規格のカフェポッド(エスプレッソポッド)が日本においても普及している(「ポッド」とはエンドウマメのさやを意味する)。カフェポッドはエスプレッソ1杯分に相当する約7gの豆を焙煎し挽いたものを紙パックにし適度な圧力をかけて整形されている。適切に挽かれているだけでなくバスケット(粉用と同じく金属製でフィルターホルダーより脱着可能だが厚みはより薄く、カフェポッド装着の上にゴム製の蓋を被せる)内部へのタンピングも不要であり、使用後も豆が散らずに片付けやすいため初心者にも扱いやすい。メーカーによってはカフェポッドを個別包装して鮮度の面での差別化を図っている。様々なロースターが味に工夫を凝らしたカフェポッドを発売している。サエコ社やデロンギ社では E.S.E. 規格(44mm径)、ネスレ社では自社開発であるネスプレッソ・カプセルに対応したエスプレッソマシンを販売している。

直火式

直火式の抽出器はコンロの上に直にエスプレッソの抽出器を置いて加熱し、熱を加えた際に発生する蒸気圧力によって抽出する方法である。
抽出器の底面が水タンクとなっており密閉されていて、下から熱を加える事で沸騰した湯がサイフォンにより器具内部にあるコーヒー豆粉末が詰められた空洞を通って、その上部にあるカップやコーヒー溜まりに溜まるようになっている。フィルターは円盤状の紙フィルターやネルが用いられ、器具本体に切ってあるネジを使って器具の上下を結合させる。なお電気式ではコーヒー豆粉末とフィルターがカートリッジ化されているものもあるが、直火式では殆ど見られない。また、フィルター目詰まりによる器具の破裂を避けるために大抵の器具には水タンクに小さな圧力弁(一種の安全装置)が取り付けられており、圧力異常の際にはここから高温高圧の水蒸気が噴出することもあるため注意が必要である。
直火式の器具では電気式のエスプレッソマシンと違い、器具の大きさによって一杯用から多人数用までが決定される。家庭などで楽しむ場合は器具が小さく構造が簡単であるため総じて安価で、置き場所も取らない。エスプレッソマシンと比べると低い圧力で抽出しているため、多少抽出され易い成分に偏る傾向があり香りの複雑さでは若干劣る。また、一度に作れるのは器具の規定容量までとなり、コーヒー豆のフィルターへのセットや水の充填・沸騰と一回ごとに手間がかかり、連続して入れることができない。一人用のものは底が小さく一般のガスコンロに載せる際に専用の五徳や補助金具が必要な場合がある。アルコールランプやアウトドアコンロ等でも抽出できるため、キャンプや登山での戸外などで淹れることも可能である。

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